「ネスレは植物由来の食品分野に強い関心を持っています。今後、この分野でネスレから皆さんに発表できることは数多くあります」
世界で有数の食品メーカーであるネスレのマークシュナイダーCEOはこのように発言をしています。ネスレは、2019年4月に植物由来の加工食品として人工肉市場の参入を表明し、ヨーロッパでは既に販売も開始するなど、積極的な動きを見せています。
マークシュナイダーCEOが、今度も市場を拡大させていきたいと熱を入れるネスレの人工肉が今後どのような発展を遂げるかに興味が集まりますが、参入表明から1ヶ月の現時点で見えてきた欧米でのネスレ動きを振り返ります。
マクドナルトをはじめ、1,500店舗で人工肉ハンバーガーを販売
2019年4月の参入表明から、ネスレはヨーロッパ8カ国で人工肉で作った「インクレディブル・バーガー」の販路拡大に動いています。
そして、その成果は既に出始めているとマークシュナイダーCEOは言います。マクドナルドなどをはじめとするヨーロッパの8カ国の1,500店舗でネスレの人工肉が既に販売されていることを明かしました。
2019年後半にネスレ人工肉は米国進出
更に2019年後半にはアメリカで同じく植物由来の人工肉を使った”Awesome Burger(オーサム・バーガー)”を販売する計画を明らかにしています。
オーサムバーガーは、Nestle傘下でベジタリアン・ビーガン向けに食品を製造しているSweet Earthブランドとして販売予定です。ネスレは、既存ビジネスの食品販売網を活かして、小売店、クイックサービスのレストラン、フードサービス事業者に対して営業をかけて、販路拡大を目指す計画です。
ネスレの人工肉は、大豆のタンパク質をベースに小麦、ビーツの根を含み、見た目を肉に似せるために人参やパプリカなどを使ったものを使用していますが、風味まで本物の肉に似せた100%植物由来のハンバーガーが、菜食主義者達にどう受け入れられるか注目が集まります。
競合ひしめく、米国人工肉市場
ただし、米国は人工肉市場として強力なライバルがいることでも有名です。
2019年4月にIPOで株式公開されてから飛ぶ鳥を落とす勢いで株価を急進させて波に乗るBeyond Meat社、バーガーキングなどの大手も顧客も抱えるImpossible foods社など、この業界で知名度をつけはじめて勢いを増すスタートアップがひしめきます。
更には、ネスレなどが手がける植物由来のハンバーガーの進化形とも言える、牛・鳥・豚などの家畜の幹細胞から作る人工肉の研究も日進月歩で進んでおり、2020年代半ばにも安価な生産方法が確立されて市場投入もありえるとの専門家の声もあります。
[2019年版] 最先端のクールなビジネス、人工肉市場の最新動向。
競合の攻勢に加えて、技術革新も進む最新のフードテック業界で、食品業界大手ネスレがどのように市場を取りに行くか今後も目が離せません。